2000年に帰国して以来、国産の和紙を捜したがどれもソーラー版画に適したものではなく、従来から使っていたフランス製の紙に頼らざるを得なかった。
 ところが、ひょんなことで人間国宝の谷野武信さんと知り合い、ご好意で手漉きの素晴らしい紙の提供を受けた。
 和紙はコウゾやミツマタが原料である。
それらは人工的に栽培可能だが、この和紙の原料「雁皮」は野生でしか生きていけないのだそうだ。
その上、漉くさいには、名塩の土も入っている。
 そのため、鼠や虫がつかず、100年以上たっても色が変わらない素晴らしい文化財である。
 いよいよ実験だ。
まず「雁皮紙」を濡らさずに摺った。
その前にサンクスリット語の祈りを捧げた。
どうしても成功してほしい。
息を詰めて紙を上げると、驚くほど鮮明に刷り上っていた。
 次に水に瞬間浸して摺る。
圧力は同じだが、表面が毛羽立った。
最後に何時も使うレンブラントも使っていたBFKで行う。
 さて、こうして見比べると、さすがに日本製の素晴らしいのが実感できる。
BFKのグレーは日本では発売されておらず、USAから取り寄せているが、人間国宝の谷野さんと話していたのだが、多分その昔宣教師などが、名塩の和紙を持ち帰り製法を真似たものではないかと思う。

 名塩はスペインから帰国して、数年住んだ所でもある。
不思議なえにしを感じる。