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毎日新聞

2004年4月27日

 

 

 

びんご日本一 NO.1
 

瀬戸田・ソーラー版画のみやちさん
 

多彩な才能 輝くスーパーウーマン

 米国など海外で注目を集めているソーラー版画。日本人先駆者として米国で制作活動を続け、高い評価を得ている女性版画家・みやち治美さんが、約2年前から瀬戸田に移り住み作品作りに励んでいる。


 ソーラー版画は、通常の版画と違い紫外線を利用して凹面を作るのが大きな特徴。紫外線量によって変化をつけることができ、写真なども素材として扱うことができる。


 通常版画は、金属板に模様をつけて版を強酸につける。凹面を作る工程中に有毒ガスが出るので環境への問題が懸念されている。この点、ソーラー版画は強酸を使わないため有毒ガスは出ず、技法以外に環境面でも注目されている。


 みやちさんは、兵庫県宝塚市の出身。ゴヤやダリなど有名な画家を輩出したことで知られるスペインの美術学校へ、初めての日本人女性として留学。帰国後、デザインオフィスを設立し、カーテンやテーブルクロスなどで独特のデザインを手がけ、人気になった。


 仕事は順調で、結婚もして順風満帆の人生を送っていたが、思いがけない事態が起きた。91年に小学校3年生だった長女が学校でいじめに合い、大けがを負った。


 みやちさんは、すぐに学校へ抗議をしたが、学校側は謝罪するどころか、いじめの事実を隠そうとした。「学校の誠意のなさやいいかげんさに怒りを感じた」と、今も憤慨している。


 この出来事をきっかけに、日本の教育の在り方に見切りをつけたみやちさんは、長女と2人で渡米。事前に手紙を送り、受け入れを快諾してくれた学校へ入学した。


 渡米中にソーラー版画と出合う。版画は元々、手先が器用な日本人に向いていたのか、みやちさんは元来の画才を版画でも発揮。めきめきと腕を上げ、数々のコンテストで賞を総なめにした。個展も開き、評価はうあんぎ上り。ソーラー版画家として米国で確たる地位を築いていった。


 長女が高校を卒業したのを機に00年に帰国。「コンテストなどによる締め切りの追われず、自分が本当に作りたい作品作りに取り組む」が、その理由だ。


 瀬戸田で活動拠点となるアトリエを作るため、みずから重機や大型特殊免許などを精力的に取得。瀬戸田で知り合った知人の協力も得て、念願だったドームハウスもほぼ完成した。


 さらに心身を鍛えるため、ボクシングにも挑戦中。小学生から続けている詩作りや執筆活動など、さまざまなジャンルにチャレンジ。美術から文学、スポーツの分野まで日本一のスーパーウーマンとして、今後の活動に期待が寄せられている。


【山中尚登】