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平和発信のアトリエ完成 広島県瀬戸田町
 

 版画家、詩人のみやち治美さんが広島県瀬戸田町に建設していた「ドームハウス」がほぼ完成した。自ら棟上げや組み立てに携わり、10カ月余り。被爆2世のみやちさんは、ドームをアトリエとしてだけでなく、反核・平和の「とりで」にしたいと張り切っている。


 約180m2、頂部の高さは9m。紫外線を利用する「ソーラー版画」に取り組むみやちさんは2年前、豊かな太陽光を求め、兵庫県宝塚市から瀬戸田に移住。昨年夏から設計に着手し、1月末から建設に取りかかっていた。


 ドームにこだわったのは2つの理由がある。「ドームは構造的に光を取り入れやすいから」とみやちさん。5つの大型の窓に加えて天窓も取り付け、版画に必要な太陽光を十分に確保した。


 もう1つは平和への思い。幼いころから、広島市で入市被爆した父に当時の惨状を聞いて育った。ドームは自身とヒロシマを結ぶ象徴である。


 1996年には、ヒロシマをテーマにした詩「WATER SUPPLY(水道)」が米国国立図書館のコンテストで特別賞を受賞した。米スミソニアン航空宇宙博物館の原爆展が、米国の保守派の圧力で中止になった直後。応募の動機は憤りであり、激しい怒りはずっと作品を生むエネルギーになってきた。


 ドームは町の高根島を望む高台に建つ。みやちさんは「穏やかな風景を栄養源にして、ここから平和を求める声を上げていきたい」と誓いを新たにしている。

 

【2002年12月6日(金)】